文 本藤ほんどう房子(HONDO料理教室主宰)
イラスト 湯浅勇司(ユアサ)

身近で遠い魚

「ボラ」 

 ボラは、日本では北海道以南、全世界の熱帯、温帯の河口や内湾の汽水域に生息しています。
 ボラは海水魚で、10月から1月にかけて外遊で産卵された稚魚は、水面近く群れを成して淡水域に遡上することがしばしばあります。
 人目につきやすい人間の生活圏で成魚は飛び跳ねたり、海面を泳いだりしますし、幼魚は水面を埋め尽くすほどの大群を成します。
 その様子は水面を歩いて渡れそうな異様な光景は、時折話題に上ります。
 高度経済成長期の海洋汚染で、「ボラの身は臭くてまずい」「猫も食べない」と言われてきました。
 しかし高度経済成長以前では、奉納されたり、祝い膳に上がったり、縁起の良い、美味しい高級魚とされていたこともあったようです。
 ボラは出世魚で、関東ではオボコ⇒イナッコ⇒スバシリ⇒イナ⇒ボラ⇒トドと言われています。
 オボコは幼い子供の様子や可愛さ、イナは、鯔背(イナセ)、トドはこれ以上大きくならない、行き着くところのトドのつまりの其々の語源と言われ、身近さを感じます。
 お隣船橋市には「ボラ学会」があり、ボラの美味しさ、良さを普及させようとしています。
 実際きれいな水域で獲れた船橋のボラは、臭みのないとても美味しい魚でした。もしかしたら、毎月一回行われる「船橋漁港朝市」で手に入れることができるかもしれませんよ。
= 旬 =
10月〜1月の産卵期です。
脂がのって美味しくなります。
= 栄養 =
ビタミンBが多く、ビタミンC、Eもある。
カルシウム、リン、マグネシウムがある。
疲労回復、動脈硬化に良い。
貧血、皮膚、血管予防に良い。
利尿作用がある。
脳神経を正常にする効果もある。
= 選び方 =
鱗が取れやすいので、鱗がしっかりあるもの。
鱗が黒っぽくはっきりして、張りがありみずみずしいもの。
鱗が白っぽいものは古い。
大きいものほど脂がのっているものが多い。
血合いが赤く、透明な身のものが良い。
= 調理方法 =
ボラが手に入ったら早々に調理します。
内臓に泥や砂、臭いがあるので飛び散らないようにご注意を。
血合いは綺麗に洗い流す。
皮は厚みがあり、臭いがまな板に着くことがあるので洗い流す。
骨は固く、良い出汁が取れます。
鯛に似た白身で甘味のある、濃厚な味をしています。
新鮮なものは、刺身、洗いにするのがいちばんですが、味噌、醤油の煮物、塩、幽庵焼き物、鍋物や味噌汁、揚げ煮、フライ、天ぷらなどの揚げ物などと調理方法があります。

《ボラの梅味噌焼き》
今年も梅干しを作りましたが、もう一品「梅の味噌漬け」と造りました。
梅と味噌を交互に挟んで発酵した果肉をミキサーにかけ、発酵を止める為に少々の砂糖を加えて練り上げたものです。
これは今年のヒットの一品で、生野菜に漬けたり、回鍋肉のように使ったりと大変品重宝しています。
ここでは、ボラの焼き物に添えてみました。
レシピでは、梅味噌漬けに匹敵する作り方をご紹介します。
たくさん作って、咄嗟の調味料として保存すると良いと思います。
〈材料〉
・ボラ ・梅干しの果肉3個分 ・味噌大匙3 ・酒大匙1
・味醂大匙1
・砂糖小匙1
・塩、酒各少々
〈作り方〉
@ボラは3枚に下ろしたものを3、4等分に切り分け、軽く塩、酒を少々振って10分程おく。
A梅干しの果肉は細かく叩いて、味噌、酒、味醂、砂糖と共に鍋に入れ、沸騰するまでよく練る。
B@のボラの水分を軽く拭きとり、高温に熱したグリルでこんがり焼き、Aの梅味噌をのせて表面を軽くあぶる。
《ボラのコンフィ―》
ここのところ低温のオリーブ油で煮る「コンフィー」にはまっていまして、イワシ、マグロのカマ、カツオ、エビ、ホタテといろいろ試している一品です。
フランスパンに浸けるオリーブ油と素材の美味しさは、キーンと冷えた白ワインにとてもよく合います。
身を解したり、オリーブ油を使って、皆さんなりのアレンジもできますので、一度作ってみてください。
〈材料〉
・ボラ1尾 ・塩大匙1+1/2〜2 ・赤唐辛子2、3本
・レモン1/2個 ・オリーブ油適宜
A(・赤唐辛子2本 ・黒粒胡椒小匙2 ・ニンニク2片
・ローリエ2枚 ・タイム2〜3本)
・オリーブオイル
〈作り方〉
@ボラは二枚におろし、血合いをきれいに洗い流し、水気を拭き取る。
Aボラに塩を振り、ザルにのせて15分程おく。
B大蒜は薄切り、レモンは輪切りにする。唐辛子は種を取る。
Cボラの水気を拭き取って耐熱容器に並べ、Aをのせてボラがヒタヒタにかぶるまで注ぎ入れ、レモンをのせる。
D100℃に熱したオーブンで50分加熱し、冷まして冷蔵庫で保存する。

 

 

次回は「シシャモ」です。